ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?

そのとき思いついて、春ちゃんにも教えることにした。


「春ちゃん、シゲ実はギターが上手いんだよ。小学生の時からやってたんだって」

「そうなんだ、習ってた? 教えてくれたらよかったのに」

「親父の趣味でやってたから、中学の時は触ってもなかったよ」


春ちゃんも驚いたけど、気を悪くした様子は全然ない。シゲも全然悪びれない。ほんとだ、嘘なんてつかなくていいんだ。


「聞きたいなぁ。それに壁の絵も本物が見たいな」


お土産に渡した額の絵を見ながら春ちゃんは言った。


「退院したら、会社に見に来てよ」


シゲの言葉に春ちゃんが「会社かぁ」と小さくつぶやく。


「シゲがもう働いてるんだもんなぁ、年もとるよ」

「何言ってんだよ……もっとちゃんとしてから、春ちゃんには会いに来ようと思ってた。まだ、全然何もできてない」

「そりゃそうだよね。僕なんて何年教師をやってても何もできない気がしてた。でもシゲが楽しそうだって、聞いたよ。僕に似た親友と仲良くて悔しいとか」

「春ちゃん、余計なこと言わないで」


悔しいなんて書いた? 尚人くんのことはもういいんだよ。私も仲良くなったし。


「なんだよ、悔しいって」


シゲも変な顔をしている。なに張り合ってんだって思ってる。
< 199 / 207 >

この作品をシェア

pagetop