ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
そのとき思いついて、春ちゃんにも教えることにした。
「春ちゃん、シゲ実はギターが上手いんだよ。小学生の時からやってたんだって」
「そうなんだ、習ってた? 教えてくれたらよかったのに」
「親父の趣味でやってたから、中学の時は触ってもなかったよ」
春ちゃんも驚いたけど、気を悪くした様子は全然ない。シゲも全然悪びれない。ほんとだ、嘘なんてつかなくていいんだ。
「聞きたいなぁ。それに壁の絵も本物が見たいな」
お土産に渡した額の絵を見ながら春ちゃんは言った。
「退院したら、会社に見に来てよ」
シゲの言葉に春ちゃんが「会社かぁ」と小さくつぶやく。
「シゲがもう働いてるんだもんなぁ、年もとるよ」
「何言ってんだよ……もっとちゃんとしてから、春ちゃんには会いに来ようと思ってた。まだ、全然何もできてない」
「そりゃそうだよね。僕なんて何年教師をやってても何もできない気がしてた。でもシゲが楽しそうだって、聞いたよ。僕に似た親友と仲良くて悔しいとか」
「春ちゃん、余計なこと言わないで」
悔しいなんて書いた? 尚人くんのことはもういいんだよ。私も仲良くなったし。
「なんだよ、悔しいって」
シゲも変な顔をしている。なに張り合ってんだって思ってる。