ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
十月一日、都民の日。東京都内の動物園や美術館にタダで入れたりする日。
うちの都立高校もお休みのこんな日に、弟と静岡のファミレスに座って、2階から歩道を見下ろしてる。
下校時刻をだいぶ過ぎてもあいつはなかなか駅前に現れなくて、ついついテーブルの脚を蹴る。
「姉ちゃん、俺疲れた」
遠くまで一緒に来てくれた守も、だんだん不機嫌。
「たぶんもうすぐだから、がんばって」
「見逃しちゃったんじゃないの。ていうか来たらどうすんの」
「あ……いた」
駅に向かう生徒達がまばらになってきた中で、シゲの姿が目に飛び込んできた。
使い込まれたスケッチブックを片手で抱えて、隣にいるくるくるした髪の男子にぶつかられるようにして何か言い合いながら歩いてる。
短髪で姿勢がよくて、優等生的な見た目。少し着崩しているのに清潔に見える制服姿は今も大人びていて、一年生には見えない。
「声掛けなくていいの。行っちゃうよ」
隣で守が慌ててるけど、椅子から動けなかった。
シゲが、笑ってる。
あんなに楽しそうに友達とじゃれている姿を、あの頃だってほとんど見た覚えがない。春ちゃんや私といた時ぐらいだったよね、そんな風に笑うのは。
大人っぽくて近寄りがたい。みんなに見せてる姿とほんとは違うのを知ってるのは、私たちだけだったのに。
ああ、本当にもう、こっちで元気にやってるんだなぁ。
全身の力が抜けた。