ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
豆大福と麦茶で、四人で遅いおやつの時間になった。 女性は綾さん、朝会った人は平井さん。それに尚人くんと私。
「会社なんですか?」
「うん、一応ね。でも、まだ半分遊びかな。結衣ちゃんは家のお手伝いだったんでしょ、この辺なの?」
綾さんがみんなに冷たいお茶を注ぎながら答えてくれる。
「いえ、双葉町の方ですけどわかりますか?」
「ごめんね、私たちこの辺まだそんなにわからなくて」
新しい会社なのか。元はどう見ても工場だから、つぶれた工場を安く借りて起業したってことかな。
でもオフィスなんていくらでもほかにありそうなのに、わざわざこういうところを使うのがかっこよかったりするんだろうか。
「会社って言っても社員は俺ともう一人だけで、あとはみんな来たり来なかったりいろいろ。今日はそいつも一人で届け物行っててね。そろそろ帰ってくるかな」
平井さんともう一人だけの会社でこの広さとは贅沢だ。あとは派遣さんってことだろうか。説明されてもさっぱりわからない。
私の混乱が伝わったらしく、尚人くんが補足してくれる。
「他の人はそれぞれフリーランスで、ほかの仕事もやってるってこと。俺は大学の休みで遊びに来てるだけ」
「こんな立地でやるのはちょっと変なんだけど。いろいろ事情があってね」
平井さんが言う『こんな立地』っていうのは、町工場が集まるこんな下町ってことだろう。