ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
「結衣はシゲを独り占めしたいんだよね?」
「そんなこと言ってない」
「いや、証拠写真もあるんだよ。シゲに会ったら見せようと思ってたんだ、ずっと。見たい?」
春ちゃんが嬉しそうにシゲに聞いてる。なんの写真?覚えがないけど。
シゲがスマホの画面を見て「黒板? 消してあるじゃん。よく見えない」と言っている。全然証拠になってなさそう。自信ありそうだったのに、春ちゃん残念。
私もひょいっと覗き込んで、思わず大きな声を出した。
「なんでこんなの撮ってあるの!」
二人にとがめるような目を向けられ、小さくなる。ごめんなさい、ここは病室だった。
黒板に残るチョーク跡の写真だった。私が美術室に描いた三人のシルエット。
春ちゃんが写真を拡大して私に見せる。
「ほら、ここ。ね?」
ああ。急いで消したから、一部はっきり残ってる。「なに?」とシゲが覗き込もうとするのを遮った。
「そこだけうまく消せなかっただけでしょ、それ」
慌ててそう言っても「そうかなぁ、本当のことはなかなか言わないからなぁ、結衣は」とまだ春ちゃんが言う。
「春ちゃんに言われたくない!」
「ああ、そうだよね」
春ちゃんがあっさり同意した。そうだよ、病気のこと、いつも教えてくれない。
「僕も本当のことを言おうか」
「本当のこと?」
病気、ほんとはもっと悪いのかと身構える。