ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
「僕はね、最初の時はガンが見つかったとき、死んでもいいかなと思ってた。頑張ると口では言いながら、もういろいろ疲れたとか甘ったれたことを思ってたんだ。病気だけじゃなくてちょうど失恋も重なっちゃってね」
恥ずかしそうに、でも柔らかな笑顔のままで春ちゃんは続ける。
「でも結衣が来てくれてね、ショックを受けたのがわかって、大事な教え子にあんな顔をさせて僕は何をやってるんだろうと目が覚めた。
今もまたぼろぼろだけど、僕はちゃんとまた生き延びる。だもんで今度は無理しないで。シゲと待ってて。ちゃんと治して会いに行くから」
待ってて。そんなことを言われたのは初めてで、私は返事もできなかった。シゲが少しためらうように私の手を取って、握ったら強く握り返してくれた。
「シゲ、結衣を大事にできるよね」
「するよ。心配してないでちゃんと治してよ」
シゲが当たり前みたいに答えてる。
「シゲがいれば泣けるんだね。初めて見たよ、結衣が泣くのを」
「治して嬉し泣きさせてやってよ」
勝手なこと二人で言わないでよ。そう言いたいのに涙声になりそうで、結局ずっと下を向いたままでいた。