ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
「春ちゃん、俺ね、会社作ってやりたかったことって、中学の時にやってた制作みたいな、ああいうの。
会社も、じいちゃんの工場だけどいつのまにか春ちゃんの美術室みたいになってる。結衣に言われて気づいたんだけど。
みんな好き勝手集まってきて、居心地よくて、一人でやったり協力したり色々できるような、ああいう場所にしたいんだよ。見に来てよ。また、なんかやろうよ」
シゲが春ちゃんに話しているのを、顔を上げられないまま隣で聞いた。
春ちゃんにはこんなに素直に話す。尚人くんとも平井さんとも違う、春ちゃんだけのポジションがシゲの中にちゃんとある。 ちゃんと、大事な場所に。
そう気づいたらまた泣けてきて「よくそんなに泣けるよな」とシゲが呆れたように言った。
病室を出て廊下を歩いていく。春ちゃんは、今はまだ外には出られないらしい。
「あれよりひどい時もあった?」
シゲが小声で聞く。
「うん。薬の最中は話もできないぐらい。私も勝手に来ちゃってたから仕方ないんだけど」
「そうか」
病室では明るかったシゲも、無理していたことがよくわかった。変に私を励ましたりしてこないでよかった。黙ったまま廊下を歩いた。シゲも私も、今一人じゃなくてよかった。