ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?

病院の広い庭を二人で少し散歩する。九月の後半なのに、今日は日差しが痛いぐらい暑い。でも木陰を見つけて入ると気持ちよかった。


「結衣は、時々びっくりするぐらい強いよな」


シゲは木の幹に寄りかかってる。一人で行くのが怖い話さっきしたばかりなのに、今だって泣いてたのに、何言ってるんだろう。


「でも、春ちゃんが失恋とか言うと思わなかったな。誰にって聞けばよかったかな」


笑って言うから、じろっとにらむ。


「せっかく本当のこと言ってくれたのに、余計なこと聞かなくていいでしょ」

「だよな。本当のこと、か」


今、こないだのこと考えてるよね。好きって言ったの、本当かって聞かれるのかな。何か言われると思って緊張する。


「俺も、本当のこと、言っていい?」


生い茂る枝を見上げながら聞かれた。何気ない口調で、でもこれはきっと大事なことを言うときのシゲだ。


「中学の時聞かれた、好きな子の話。真央は年上だし、ガキの頃は多少憧れるっていうか好きだと思ってたことはあるけど。本当は、あの時はもう他の子が好きだった」


なにそれ。なにそれ。


「とっさに言っちゃったんだよ、あの時。でも結局バレてるかと思ってた。あれだけ毎日会ってる上に、休みの日まで何度も誘っててさ。好きでもない子にそんなことする奴いないだろ」

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