ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
こっちは先に気づいてるから、余裕を見せてやろうと決める。
「久しぶり、シゲ」
思い切り普通に聞こえるように声をかけても、シゲは私じゃなくて尚人くんを見る。
「パンクしてたから自転車屋連れてったら、お礼ってお菓子持ってきてくれたとこ」
尚人くんの説明を受けて、私も言う。
「家の手伝いでこの辺に来てたの。そっちは?」
「あー」
シゲは言葉が出てこない。
会いたかったって反応じゃないよね。やっぱり帰ればよかった。さっきの怒りが行き場をなくしてしぼんでいく。
「まあまあ、座ったら、とりあえず。えーと、二人は中学の?」
固まった空気をほぐすように、平井さんが声をかけてくれた。綾さんと尚人くんは、面白そうに見物って感じだ。
「美術部の友達です」
平井さんには礼儀正しく答えて、またシゲがちょっと黙る。
促されてテーブルのほうまで歩いてきたけど、近寄っては来ない。
「じいちゃんに呼ばれて春に戻って来て、会社は始めたばっかり」
私の方を嫌そうにちらっと見ながら、ようやく説明を始めた。
「連絡しようかと思ったんだけど、忙しかったし、なんか今更だし、きっかけが」
言った後、はーっと息を吐いた。
「急に出てくんなよ、ビビるだろ」
何か月も前に東京に戻ってきていて、それでも今更連絡しても意味ないと思ったと。
ほかになんか言うことないの? じっと見るけど、それで終わりみたい。