ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
親父の会社が本気でやばいらしいって聞かされた翌日、たまたま結衣との賭けに負けて、帰り道でアイスをおごっていた。
一人で抱えてるのがちょっときつくて、だからちょうどたまたま一緒にいたあいつに吐き出した。
それだけ。
「俺、高校は静岡になるかも」
なんか言えよ。無言でこっち見るなよ。お前、無駄に目がでかいんだよ。
「……親父の会社、やばいかもって」
結局、沈黙に耐え切れずに俺が言った。
いつもこうなる。結衣はくだらないことはよくしゃべるくせに、まじめな話になるとだいたい黙り込む。
「親戚のところ、行くかもしれない」
「小学校の時にいたところ?」
「幼稚園、な。そことは違うところ」
「つぶれそうなの?」
「そこまでは聞いてない。ここんとこ、変に忙しそうにしてるけど」
結衣はそのまま何も言わないで、アイスに集中した。
コンビニ前の駐車場は、夕方でも焼けてるみたいに暑い。
「まだ死にそうに暑いな」
言っても反応がない。なんだよ。
「シゲ」
呼ばれてちょっと身構えたけど、「溶けるよ」とアイスを指して、そのまま俺の食べかけの棒アイスを横取りしやがった。
にらみつけてみたけど、気にしている様子もない。
まぁ、いつものことだ。
当たりだったら棒は俺のだから返せ、最後に持っている人が権利があるって知らないの、誰が決めたんだよそれ、とかいうくだらない言い争いをいつも通りする。
ほんとに当たり棒で、しかたないからそのまま結衣にやった。
このまま夏が終わらなきゃいいのになぁ。