ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
春ちゃんへの失恋が決定的になった時だって泣かなかったのに、こんなことでうっかり涙が出そうになった。
シゲの後ろ姿が駅のほうへ遠ざかるまでじっと見送ってから、伝票を持って勢いをつけて立ち上がった。
「帰ろっか」
座ってる守に声をかけると、弟のくせに私をにらんで文句を言う。
「なんだよ、会わなくてよかったの、姉ちゃん。走れば追いつくよ」
「生存確認したいだけって言ったでしょ。元気そうだったから、これでミッション完了」
「そんなんでいいの? 純くんには今日のこと言ってないんだろ。彼氏に内緒でほかの奴に会いに来たくせに声もかけないって、なんなんだよ」
「なんでもないの。純に言いたければ言えば」
守には、それ以上余計なことを言わせなかった。確かに純にはシゲの話はしたくなかったけど、別に隠してるわけでもない。
「せっかく俺の休日を捧げたのに」と帰りの電車でもまだ文句を言う守を、乗り換え駅でアイスをおごってどうにかなだめておいた。
「俺、今日はアイスよりケーキがよかった」
棒アイスをもう食べてるくせに文句を言う。
「買って帰ろうね」と言ってあげると「いちご乗ってるやつね」と注文を付けてきた。
中二の守は、まだまだ子どもだ。