ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
じいちゃんの町工場を継ぐはずだった親父は、景気の悪い時に無茶な新規事業に手を出し、本業の利益を食いつぶしたあと別の会社を作って飛び出した。
いろいろやっていたみたいだけれど、俺は一緒に住んでない時もあったし、あまり知らされていない。
親子関係も夫婦関係もややこしさを極めていき、二つの会社を整理する頃には、まだ子供である俺は古巣の静岡に送られることがいつのまにか決まっていた。
十五才だった。今よりもっとガキで、でもなんでもすぐ諦められるほどのガキでもなくて、あの転校は最悪だった。
誰にも言わず、携帯も解約して、全部忘れることにした。今覚えば、そういう極端なところがガキなんだ。
繋がっとけば、こんな後悔を引きずることもなかったかもしれないのに。
中学最後の数ヶ月と高校全部を、俺は親戚の家で過ごした。
その後、相続対策だとかのじいちゃんの意向により、工場に住めと呼び戻されて今に至る。
結局は住んでるだけじゃなくて会社があるのがいいとか周りが騒ぎ出し、潰れた工場を使って起業するなんてことになってる。
振り回されることには飽き飽きして、細かいことには口を出されないことを逆手にとって、好き勝手やらせてもらってもいる。
まだ生意気なガキでいられるうちに、この状況をなんとかしたい。
自分のことを面倒見られる、できれば周りの世話もできる。そういう大人になりたい。