ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
普段は俺一人で住んでるけど、大学が夏休みの今は、空き部屋に尚人が滞在中。高校時代の、いわゆる親友だ。
「シゲ、まだ友達と連絡とってないの?」
居候のお礼にと買ってきてくれたソファでビールを飲みながら、尚人が聞いてきた。
「ここって前住んでたとこから遠いんだよな?偶然誰かに会うとか、ないんだよね結局?」
うるせえなぁ。今さら面倒くせえんだよ、色々説明するの。偶然会わなきゃそれでいいよ。
今はまだ、自分のことに集中したい。まだ、何もできてない。
「小学校の奴らには会ったよ、この辺にいるから。でも色々聞かれて正直ちょっとめんどくさい。中学のほうはとりあえずいいよ」
「あれは? 美術部の凶暴な子。会いたいんじゃないの?」
「会ったらそれこそ殴られそう」
「俺見つけて来てやろうか?」
冷蔵庫を開けてペットボトルを取り出しながら、尚人は気軽に言う。
「どうやって」
「わかんないけど。かわいいんだろ?」
俺にもボトルを放り投げながら、だったらすぐ見つかるというような調子で聞いてくる。どこの田舎町だよ。
「そんな目立つほどじゃない。顔だけだったら真央のほうがかわいいかも」
「ああ、幼馴染? もうすぐ帰ってくるんだっけ?」
「手出すなよ。隣の家には世話になりまくってるから」
尚人は割と女好きだけど、執着しないからダメだと言えば大丈夫だろう。真央になんかしやがったら許さねえってのは伝わってるはずだ。
あれから四年経ってる。結衣には忘れられてんじゃないのかな、俺。中学の最後までいたわけでもないし。
俺は結局、うまく忘れたとは言えないけど。