ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
それから数日。
珍しく一人で届け物に出た後、帰ったら事務所で何人か集まってて、なんでかそこに結衣がいた。
「久しぶり、シゲ」
驚きもせず、普通にあいさつしてくる。
やばい。心の準備がないから、とりあえず体勢を立て直したかった。
恐ろしいことに、本当に尚人が連れて来ていた。偶然らしいけど。
結局立て直すどころか結衣が静かにキレはじめて、「ごめん」と謝ることになり、そしたら意外にもさっさと許してくれた。
「マジで見つけてくるとか、なんなんだよお前」
工場裏の二階に戻った後で、尚人に聞いた。
「いや、偶然。かわいかったし凶暴だったからもしかしてと思って」
「会ったの朝なんだろ。先に言えよ」
「それじゃつまんないからさぁ。静岡に友達いるって言ってたけど、シゲは訛りないよな」
「訛り? ああ、春ちゃんかな。美術の先生」
「友達って言ってたよ」
「みたいなもん。あいつが惚れてて、仲良かった」
わかんないけどな、高校とか大学の友達かもしれない。
「明日付き合えって、なんだろうね」
尚人は俺が謝ったのを笑っている。
「さあ。中学のやつらに会わせて謝らせるとかかな」
「俺も行っていい?」
「いいけど。なんで?」
「シゲが面白い」
「なんだよ、それ」
「女の子相手にあんなに動揺してるの初めて見たよ」
目をキラキラさせて喜んでいる。男のそういうの、うざい。
「うるせえな。ちょっと後ろめたいんだよ。怒ってたじゃん、あいつ」
「怒ってもらえて嬉しかったんだよな。変態だなぁ、シゲ」
誰がだよと言いながらも、確かにそうだなと思う。
「久しぶり、シゲ」って普通に言われたとき、かなり衝撃を受けたのはたぶんそういうことだ。
俺はそんな風に普通に再会できる気がしてなかったから。
あいつもまだ気にしてるっていうか、怒ってくれてるって、確かに嬉しかったよ。まぁ、変態かもな。