ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
中学美術部の顧問だった春ちゃんに頼んで、シゲの引越し先は前に聞いてた。個人情報って勝手に聞いちゃいけないんだろうけど見逃してくれた。
それでもずっと来られずにいた。冬休みになったら、高校受験が終わったら、高校に入ったら。なんて言い訳しながらもう一年過ぎた。
もしかして、もしかして、まだいろいろ大変でこっちに連絡するような気分じゃないのかもしれない。家の都合で急に転校して、シゲも落ち込んでるのかもしれない。
この期に及んでそんな望みを持っていた自分にいまさら気づく。
シゲが一人でつまんなそうに歩いてたら、出て行って「久しぶり!」ってきっと笑って見せられた。
すっごく驚いて、でも時々見せる照れたような怒ったような顔をして「何しに来たんだよ、結衣」とぶっきらぼうにきっと言う。
そんな風に、ちょっと思ってた。
またやっちゃった。
いつも、妙な期待をしては、自分のバカさを思い知る。
元気でよかったなんて嘘ぶきながら、どこまでも自分中心な私がいる。
今度こそ忘れよう、私も。とっくに忘れられてるんだから。
バイバイ、シゲ。
流れていく秋晴れの景色を眺めながら、 窓枠に肘を乗せて一人で勝手につぶやいた。