ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
「とりあえずお店に入ろうよ」と明るく愛華が言い、シゲが平井さんたちと時々来るという二階のレストランに向かう。


入り口で迎えてくれた店員さんに、愛華が五人だと告げた。


「あと一人って誰?」


シゲが聞くと「田辺くんたち声掛けたんだけど、急でダメだったの。ごめんね?」とすまなそうに答えている。



嘘だろうなぁ、これ。


あの辺みんながダメなんてありえない。高校卒業の時にやった同窓会でだってまだシゲの話題を出してたのに。


誰が来るのかはうまくはぐらかしてる。こうやって情報操作するのが愛華の戦術だ。シゲなんか敵うはずない。




すぐに案内されてとりあえず席に着く。シゲの目の前を愛華が確保したので、私は愛華の隣に座った。


シゲはおじいちゃんちに住んでいて、大学に行かずに働いてるって話だけしている。会社のことは言わないらしい。



「東城くん頭いいのに、進学しないのもったいないね」

「井上は? 大学? 今なにやってる?」

「私は家政科なの。料理とか好きだから」


嫌がってたくせに、愛華には愛想よく応対している。外面いいところも変わってない。いや、昔よりそつがないかな。話してるようで自分の話をしてない。


意外と当たり障りなく乗り切れそうかな、と少し安心してドリンクを一口飲んだ。

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