ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
途中でトイレに行って戻ったら、男子三人がいつのまにかビールを飲んでいた。
「何やってんの、純。飲まないでよ」
と小声でとがめると「僕が言い出したんじゃないよ」と言い訳する。
一応まだ未成年でしょ、全員。でもこのメンバーだと見た目で疑われないらしい。
純は緊張をほぐしたくて飲む癖がある。こっそり家に持ち込んだりしてるみたい。アル中になりやすいタイプなんじゃないのと思う。
「いいじゃん、ちょっとぐらい。相変わらず真面目だなぁ、結衣子は」
愛華がそう言うならいいけど。でもそういう自分は飲んでないのが気になる。
「私が古瀬くんちにチクるとか思ってるんでしょ。しないよ、そんなの」
座り際に耳元でこっそり言われた。当たり。完全に読まれてる。本当にこの子には勝てない、今も昔も。
純の家は厳しくて、家では誰も飲酒をしない。純がうちに来た時にお父さんが一緒に飲むのを許したのに気づいて以来、純のママは私のことを毛虫のように嫌っていた。しかたないとは思うんだけど、私はむしろ止めたのにな。
愛華のうちとは親同士が仲良いらしい。
「どうせお付き合いするなら愛華ちゃんみたいな子がいいのに、だってさ。世界に二人だけになっても、あの子はないけど」
私と二人の時だけは強気な純が前に言ってた。負け犬の遠吠えだ。どんな女の子だったらありだって言うんだか。
お酒を飲んだり私と付き合ったりすることは、家で従順な純のささやかな抵抗なんだと思う。