ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
あの薄情者、東城成彰(とうじょうしげあき)とは中学の美術部が一緒だった。
仲良くなったのは二年の時。新任教師の春山先生が始めた合同制作の面白さにハマって、二人で美術部の活動日でなくても美術室に入り浸るようになった。
私は憧れてた春ちゃんと仲良くなれたことに単に舞い上がっていたけど、シゲの方は複雑な家庭らしく、あまり家に居たくないみたいとだんだんわかってきた。
中二の冬休み、家出して春ちゃんの部屋に転がり込んでたというシゲは「親が喧嘩しててうざかった」と言うだけで詳しいことを話してくれなかった。
「ねえ、シゲ、春ちゃんちってどんなだった?」
あえて明るくふるまおうとする気持ち半分、本気で知りたい気持ち半分で聞いてみた。
「別に普通。一人暮らしって感じ」
「普通ってどんな。カーテンの色とか雰囲気とか教えてよ」
「どんなも何もねえよ。春ちゃんちエロいDVDとか意外とあって、結衣が入ったらショックで死ぬかも」
「うそ!」
思わず口を抑えた。そんなのあの春ちゃんが持ってるわけない!
「何赤くなってんだよ、嘘だよバーカ」
シゲは意地悪そうに笑って先に行ってしまう。むかついてペンケースを後ろから投げつけた。
「いってえな。なんでそんな凶暴なんだよ」
呆れたように言うけど、そっちこそなんでそんななの!
大人っぽいとか近寄りがたいとか言われてるけど、みんなー、嘘だから、だまされてるからー!
こいつ、ただのエロバカ男子だから!
振り向いてペンケースを拾ってくれるときの笑顔で、私もついだまされちゃうんだけどね。なぜだか人を惹きつけるくせに、一歩引いてるところがある。シゲはそういう変なやつ。