ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
会社兼おじいちゃんの家までの道を、尚人くんと歩いて戻っていく。
電車で帰るとかなり迂回するので二回乗り換えて三十分以上かかるけど、自転車ならほぼ直線で十五分でうちに帰れる。
「純くん、面白いね」
「そう? 今日はおとなしくしてたみたいだけど」
どういう含みがあるのかと、ドキドキする。今日、この人一人だけが冷静にみんなを観察してたはずだ。
「シゲも、面白かったなぁ」
尚人くんは一人で思い出し笑いをしている。
「愛華ぐいぐい行ってたから? いろんな意味で強烈だからね」
「ああ、愛華ちゃん? シゲにはあのくらい行っとかないと逃げられるから、いいんじゃない」
そうだね、逃げられちゃったからね、私たちみんな。
「シゲを好きなのかなって思ったんだけど」
尚人くんが隣でふと言った。ぎょっとして足が止まりそうになる。純のこと?
「いちゃついてるの見せつけちゃうってことは、違うんだ?」
面白そうに横から顔を覗き込まれる。
なんだ、私のことか。そう思ってくれたならよかった。愛華対策ミッションも成功したし、尚人くんに怪しまれてもない。
「周りが勝手にシゲと付き合ってたって思い込んでるの」
「でも否定もしなかった?」
「どうでもいいでしょ? シゲはもういなかったから、その時には」
「怒ってるんだ?」
尚人くんの髪がふわりと夜風に揺れる。
「本音で言って大丈夫だよ。シゲには内緒にしとく。俺口堅いよ」
口が堅いねぇ。そうは見えない。うっかりのふりして口にしちゃうタイプじゃないかな、面白いと思ったら。