ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
そんなことを考えてたら、ぷはっと尚人くんがおかしそうに笑う。
「シゲが言ってた通りだね。黙ってじっと見てくるから怖いって」
「ほら、そういうの本人に言っちゃうの、口が軽いよ」
「大丈夫。肝心のところは言わないから」
いったん立ち止まって、正面から真面目そうに言ってる。でも口元が笑ってる。
「シゲにはごめんねって言っといてくれる? 愛華送らせたりして。でもこれで、田辺でも誰でも会いたい人に会えるから」
「会いたかったのは結衣ちゃんだと思うよ、シゲは」
「そう? 私は別に。元気でやってるみたいだったし」
うっかり口が滑ったけど、尚人くんはそこは気にならないようでホッとした。
確かに、あの中学で一番仲良かったのが私なのは間違いないんだろう。
でも、シゲには小さい頃から好きな大事な人がいた。
私は転校しちゃえば存在を忘れるほどの友達だった。
そういうことだ。
会社について、また中に置いておいた自転車を出してもらった。
「なんで知ってたの?シゲが元気だって」
聞き流したのかと思ったのに、今更聞かれる。侮れないなぁ、尚人くん。
「都民の日って知ってる? 静岡にも県民の日ってある?」
「県民の日? あるのかな、知らないけど」
「学校が休みになるの。大丈夫なのかなってちょっと思って、見に行ったら天パの男の子と歩いてた」
驚いた顔をして、ちょっと言葉に詰まっている。なんとなく満足。
尚人くんが何か言おうとする前に、先手を打つ。怖いとよく言われる眼力をわざと強めて言った。
「シゲには言わないでね。口が堅いんだよね」
「じゃあ俺たちの秘密ね。いいね、それ」
くるくるした髪をかきあげてふわりと笑う。あれ、勝ったと思ったのに負けたみたい。
抱えたものを吐き出そうとしてたのに、結局また秘密を増やして自分の首を絞めたのかもしれない。
まあいいや、どうでも。