ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
返信しなかったから尚人くんに何か言われたのか、シゲから夜に電話があった。
『明日、来られる?』
いきなりそれ? どういうつもりか探りたいけど、電話ってそういうわけにも行かなくて苦手。
『俺、昨日のあれで許してもらえたんだよな?』
「そう言ったかもね。そもそも何を許すのかわかんないけどね」
『都民の日、とか』
「……なんか聞いたの?」
『何を? あの時約束してただろ、遊びに行くって』
ああ、そっちか。尚人くんが喋ったのかと思った。
『聞きたいことあるし、とにかく明日来いよ。待ってるから』
言いたいことを勝手に言って、切れた。
なのなのこの態度。行くとか一言も言ってないんだけど。
でも、翌日ふらっと出かけてみた。バイトなくなって暇だし、自転車塗るってどんな感じか興味あるし。
それだけ。
今日はオフィスのほうには何人かPCで作業している人もいて、平井さんと尚人くんが「おはよう、結衣ちゃん」と当たり前のように迎えてくれた。
奥の方に案内されると、壁で囲まれで部屋になっているエリアがあり、ペンキの缶や工具などがおいてある。
描きかけのキャンバスがあったりして、美術室みたいできょろきょろ見回してしまう。作業場と呼ばれているけど、ここはそんなに仕事では使っていないらしい。
学校の教室みたいな机が一つある。シゲ専用なんだって。美術室にもあった、こういう机。使ってたのは私だったけど。