ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
一度自転車のパーツをバラしてから塗るんだという工程を見学する。ジャージやら作業着やらが似合う人だな。
やっぱり春ちゃんに似てるかもしれない。汚れるからとよくジャージを着ていた。体育の先生と「お揃いですね」と笑いあったりしていて楽しそうだった。
「シゲは外回り中。あいつ結構忙しいんだ」
聞いてもいないのに尚人くんに説明される。
何が『待ってるから』だよ。いないくせに。
バラした自転車にはヤスリをかけるというので、手伝いながら話をした。これは今日中には完成しない感じがするから、置いていってまた来ることになるかな。
「尚人くんは、夏休みだけ来てるんでしょ? 仕事も手伝ってるの?」
「俺は自分でイラストの仕事持ってるし、大学の課題もあるけど。夏の間に何かやるかも。わかんないなぁ、今のところみんなの様子見てるだけ」
「それで自転車塗ったり? これってシゲのと同じ色に塗っていいの? 嫌がられないかな」
「シゲはいいみたいだったよ。面白いよね、お互いに嫌がられてると思ってるんだ?」
工具を持って嬉しそうに、目をキラキラさせたまま聞かれる。
「静岡まで来てくれたって知ったら、シゲは喜ぶよ。言わないの?」
「別に喜ぶようなことじゃないでしょ。生きてるかなって見に行っただけ」
むしろ怖いんじゃないの、見ただけで帰ったなんてストーカーみたいで。