ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
中学生女子の話題の常として、誰が誰を好きって話はよく出ていて。
中二の終わり、愛華(まなか)達が「東城くんは、絶対結衣子を好きだと思う」と盛り上がっていた。付き合っちゃえばいいのに。そんな風に何度も言われた。
「そんなことないよ。シゲは春ちゃんが好きなんだよ」と笑ったけど、そういえばそう言うの聞いたことなかった。
私は顧問の春ちゃんに夢中だったしシゲもそれを知ってたけど、シゲは自分の話はしない。いつもなんとなく秘密主義。
バカな私は相談に乗るふりをして「シゲは好きな人いないの?」とある日聞いてみることにした。
一瞬驚いたように私を見てから、視線を外したシゲはなんでもないことのように言った。
「いるよ。幼馴染で一個上の子」
その答えを聞いてしまってから、わかった。
いるけど誰だか教えないと言われたり、私のことが好きだと言われたりするんじゃないかと、うっすら期待していたんだ、私。
「そうなの? どんな人?」
とか聞いた割に、あまり覚えてない。私たちの中学の人ではないらしかった。
バカだったなぁ、と今でも思う。
ほかに好きな人がいるくせに、シゲにも好かれたいとどこかで思っていた。春ちゃんへの想いが決して実らないことに気づき始めて、へこんでたから。
女子的な、中二的な傲慢さ。
自分のことだけがかわいい。
幼馴染だって。きっと小さい時からずっと好きってことだ。私みたいに最近仲良くなった子なんて、関係ないんだ。
一個年上だって。もうすぐ高校生。きっと大人っぽくてきれいな人なんだろうな。シゲだって確かに見た目は大人びてて、年上に見られることが多い。
見たことのないその人とシゲが二人で微笑みあっている姿が想像できるような気がした。
私のことを好きなんじゃないかと思ったなんて、とにかくひたすら恥ずかしくて絶対にばれたくなかった。
だから、その日以来、シゲは私にとって男女の壁を超えた親友。
そういうことにした。