ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
そう言えばと思って、愛華のことを聞いてみた。
「愛華、あれから何か言ってきた?」
「ああ。集まるからって呼ばれたけど、事情話したら遠慮してくれた」
なんのことかと尋ねると、シゲはニヤリと笑って答える。
「古い工場でこき使われてて、休みがほとんどもらえない。家もゴタゴタしてるし文句も言えないけどって」
作業していた柴崎さんが、シゲの隣でふき出した。
「使われてないでしょ、社長」
「使われてますよ。寝る暇ないぐらい」
そうだ、シゲは社員じゃなくて、平井さんと二人とも代表取締役なんだった。形だけだというけれど、正式にそう登記されているなら本物だ。
「社長だって言ったら食いついてきたんじゃないの、その子」
「食われても怖いんで」
二人の掛け合いを聞きながら思った。本当に中学時代はシゲの中で必要ない思い出なんだろうって。愛華はともかく、他のみんなにも別に会いたくないのか。
急ぎの用はなかったけど、立ち上がって綾さんのところに行くことにした。
誘ってくれたんだから私は多少なりとも別扱いだとしても、ほんと偶然でもなければ一生会わなかったのかもね。