ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?



そう言えばと思って、愛華のことを聞いてみた。


「愛華、あれから何か言ってきた?」

「ああ。集まるからって呼ばれたけど、事情話したら遠慮してくれた」


なんのことかと尋ねると、シゲはニヤリと笑って答える。


「古い工場でこき使われてて、休みがほとんどもらえない。家もゴタゴタしてるし文句も言えないけどって」


作業していた柴崎さんが、シゲの隣でふき出した。


「使われてないでしょ、社長」

「使われてますよ。寝る暇ないぐらい」


そうだ、シゲは社員じゃなくて、平井さんと二人とも代表取締役なんだった。形だけだというけれど、正式にそう登記されているなら本物だ。


「社長だって言ったら食いついてきたんじゃないの、その子」

「食われても怖いんで」


二人の掛け合いを聞きながら思った。本当に中学時代はシゲの中で必要ない思い出なんだろうって。愛華はともかく、他のみんなにも別に会いたくないのか。




急ぎの用はなかったけど、立ち上がって綾さんのところに行くことにした。


誘ってくれたんだから私は多少なりとも別扱いだとしても、ほんと偶然でもなければ一生会わなかったのかもね。
< 61 / 207 >

この作品をシェア

pagetop