ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
「あー、またクールビューティが戻って来ちゃった、残念」


綾さんが隣でお茶を飲みながらポツリと言う。


高校で時々言われてた。無表情ってのを丸く表現した言葉で、いい意味でもトゲがある意味でも使われる。


大学でも似たようなことを言われてるけど、高校の同級生がいて何かしゃべってるからかなと思ってた。


そういう相手がいないここでは言われないと思ったのになぁ。


クールな振りが板についちゃったってことか。別の場所に行けば変われるかもなんてのも、幻想かもしれない。




「先生なんだって? 俺彼氏かと思ったよ、一瞬。結衣ちゃんキラキラしてたよ」


デザイナーの原田さんが、食べ終わったお皿を片付けながら話しかけてきた。


「そうですか?」


当たり障りなく流す。春ちゃんを好きだったとか、いちいち言って回る必要ないし。


「中学の時好きだった先生でしょ、シゲが言ってたよね」


尚人くんがお皿を重ねるついでに口を挟んでくる。


「そうなんだ、俺も音楽の先生に憧れたよ昔」

「音楽の先生ってなんかエロいですね」

「いやぁ中学生だからなぁ、俺だってキラキラしてたよ」


話しながら行ってしまった。


そうだね、あれは憧れだ。病気で弱ろうがヘタレようが、今も春ちゃんは私の憧れだよ。


でも、実際に弱ってるところを見るのは怖くて、今の状況を聞き出せないでいる。治ったはずだったのに、また病院にいるの?って。

< 64 / 207 >

この作品をシェア

pagetop