ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
「綾さんのほう忙しくないなら、俺も結衣借りるね」


尚人くんがシゲに話しかけている。いつのまにか呼び捨てだ。


「お前仕事してないだろ。なにさせる気だよ」

「SAIとかイラスト系のソフト使える?手伝ってほしいんだけど。美術部だって言うし」

「やりたい?」


シゲはバカにしたように私を見る。わかってるよ、絵も下手だし、パソコンでの作業も得意じゃないよ。


「じゃあ壁塗るのは? 奥の壁塗り替えようって話進めたいんだよね」


尚人くんが別の提案をした。壁?楽しそう。


「塗るの好きそうだもんね。よし、じゃあそっち」


答えなくてもわかったらしく、尚人くんがシゲに向かって言った。シゲは不満げに尚人くんを睨むから、慌てて口を挟んだ。


「綾さんの手伝いちゃんとやるよ? でもできることあまりないし」

「そうそう。結衣ちゃんも好きなことやっていいって私が言ったの」


綾さんも加勢してくれて、シゲは分が悪くなったからか「だったらいいけど」となんだかふてくされて出て行ってしまった。


コーヒー入れたのに、なんだよ。


「なんで怒ってんの」


ドアに向かって言ってから、はっとした。私、一応シゲに雇われてるんだっけ。好き勝手しちゃダメなの当然か。


やだなぁ、そういう関係。

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