ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?


なに今の。


なんでそんな優しい声でおやすみとかいうの。いつももっと感じ悪いくせに。




切れてからも、スマホを持ったまましばらくぼーっとしていたらしい。部屋に入ってきた弟の守に、なにやってんの、と聞かれて気がついた。


新しい男でもできたかと聞かれたから、違うよシゲだよって言ってみた。


「は? 東城先輩? 帰ってきたの?」

「そう。愛華達にも会ってるから、この辺で見かけるかもよ」


はぁぁ、と守がいかにも大げさなため息をつく。


「姉ちゃんはさぁ、人が良すぎるんだよ。なんで全部許しちゃうわけ。愛華先輩も手のひら返してきてさぁ、あんなの信用するなよ、また何されるかわかんないぞ」


はいはい。恋愛がらみで女子の態度は急変するなんてこと、あんたに言われなくてもわかってます。





「こないだのホームレスの話、俺今日見てきたんだけど、違ってたわ」


急に話が変わった。飲食店をいくつか潰した後、行方不明になっているおじの話だ。


ホームレスになっているという噂があったけど、やっぱり人違いだったのか。


「ありがとね、守。お疲れ様」


お父さんはほっとけと言うけれど、私たちはこっそり情報を集めようとしてる。どこかで元気にやっててくれるといいんだけど。


でも、おじさんが幸せそうなところを実際見たらやっぱりむかつくんだろうか。こんなに心配してたのに、とか言って。


勝手だなぁ、私。


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