ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?



工場奥の壁塗り計画が思ったより大きな話になったのは、それからすぐ後のランチタイムだった。尚人くんと平井さんが、お昼の後もダイニングで座り込んだまま話し合っている。


「海ねぇ、夏場はいいけど冬になったらどうかな」

「また塗り替えればいいんじゃないですかね」

「もったいないだろ、それも」


尚人くんは私が言った「海の中みたいにしたい」というのが気に入って、平井さんと交渉している。




そもそもダイニングへの扉がある奥の壁がうす汚いから塗ろうっていう話だったのに、どうせなら壁画にしようとか、黒板作ろうとか、ランチに集まった人からいろんな意見が出ていた。


そんな風に雑談的に出たアイデアから仕事に発展することが本当にあるのが面白くて、みんなでランチできるようにしてるんだと綾さんが教えてくれた。


綾さんは、遊びと仕事が一緒になったような平井さんの仕事ぶりに惚れ込んでいる。結婚する予定なんだって後から聞いて、驚いたけど納得もした。公私共々パートナーな感じで、でもベタベタすることもなく爽やかな二人だ。




それにしても、壁の話から広がるのがどんな仕事なのかぴんと来ないけど。内装の仕事とか?


「結衣ちゃんはどういうイメージなの」


平井さんから私に聞かれるけど、適当に言っただけだからなぁ。


「サファリっぽい動物シルエットのハガキ持ってるんですけど、それの海バージョンがあったらいいなって思って」


思いつくままに話してみる。


「魚のシルエットってこと?」

「あとイルカとか、いろいろかな」

「まぁ面白いかもね、いいデザイン出来たら使えるか。俺が気に入るような案作れたら塗ってもいいよ」


平井さんから一応OKが出たけど、私はそんなの作れないから、尚人くん次第だな。この人はシゲと高校美術部が一緒で、デザイン系の学部に進んでいる。イラストのバイトもしてるって言ってたしね、本格的なんだ。



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