ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
床に座って何か描いていた尚人くんが、顔を上げた。
「行きたいなら俺も行こうか? 一回ぐらい家に帰ってもいいし」
「尚人はひまならやること山積み。それに結衣にも手出すなって言ったろ」
シゲが何気なく言ったあと、変な間があいた。
「平井さんとこ行ってくる」
急に立ち上がって作業場からシゲが出て行ったのを見届けてから、尚人くんが堪えきれないように笑い出す。
「結衣が絡むとバカ弱いよね、あいつ」
「尚人くんて、よっぽど女の子が好きなんだね」
「結衣が全然動じないのがまたいいね。シゲにあんなこと言われたら真っ赤になってもいいのになぁ」
すみませんね、可愛げなくて。勘違いするほどうぬぼれてないし。結衣に『も』って何だろうってほうが気になるよ。
いちいちそういう話にしたがる、この人。かと思うと妙にちょっかい出してくるしなぁ。やっぱり遊んでるのかも。
手なんか出されるつもりないけど。純に慣れているから、男の子に近寄られても頭ぐらい撫でられても別にドキドキしたりしないんだよね、私。
「水族館、行ってみる?」
実物を見てみたらイメージが沸くかもしれないと思って、誘いをかける。
「いいね、俺と二人で?」
「三人で」
きっぱり答えたら、素直じゃないね、と笑われた。