ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
土曜日、シゲを強引に誘って三人で近くの水族館に向かってる。
距離的に行けるとわかってなぜか自転車で行くことになり、暑い中フラフラになりながら進んだ。
尚人くんも、誰から借りたのか知らないがママチャリに乗っていた。シゲだけがかっこいい自転車で、走りやすそうでずるい。同じ柄だけど、私のママチャリはかっこよくないし性能も悪いぞ。
あまりの暑さに、途中のコンビニで休憩してアイスを食べた。
「帰り涼しくなってからじゃないと、きっと死ぬな」
「誰だよなあ、自転車で行こうとか言い出したの」
「お前だよ」
シゲが尚人くんの頭をはたいている。
いいなぁ、と思わず見てしまった。静岡に行った時もあんな感じだった。シゲは私には頭だって触らないなと思ってから、何考えてるんだと一人でうろたえた。
駐車場でじゃれあう楽しそうな二人を眺めながら、食べ終わったアイスの棒をちらりと見る。
「当たり!」
思わず叫んだ。久しぶりだ、当たり棒。
「またか。結衣の当たり率高すぎるよな」
シゲがうんざりした口調で近寄ってきた。
「そんなによく当たるの?」と尚人くんがシゲに聞く。
「俺たぶん、一年で三回見た」
そうだった? あの頃毎日のように食べてたからね、このアイス好きの人と。私はほとんどいつも、この棒アイスを食べていた。
「私はずっと同じのが好きだけど、シゲはすぐに諦めて他のにするからハズレばっかりなんだよ」
「至言だね」と尚人くんが大きくうなずいて同意する。
「尚人くんも、棒アイス派?」
「いやー、俺はシゲよりひどいな」と言ったかと思うと、シゲをチラ見してお腹を抱えて笑いだした。シゲがそこに蹴りを入れている。
ほんとになんなの、この子犬みたいな二人。楽しそうだなぁ、シゲ。それは嬉しいけどね。会社だと、やけにしっかりしちゃってて話しにくいから。
あの頃のこと覚えてるんだね、意外と。覚えてるけど連絡したくもなかったっていうのはなんなんだよ、と思うけど。