ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?

大きな水槽を見たり、イルカショーをみたり、水族館は久しぶりで普通に楽しかった。でも壁画のアイデアなんてまるで浮かばない。水槽をただ絵にしただけだと、普通すぎて平井さんがダメって言うんだろうな。


シゲはどこかに行っていて、尚人くんは水槽前でスケッチをしている。うまいなぁ。




しばらく見ていたけど、なんとなく一人で外に出たら、ペンギンの餌付けが始まっていた。


横から水上と水中が同時に見られるから、ペンギンたちが飛び込んで魚を追いかける様子が全部見ていられる。


うわぁ。すごいきれい。ペンギンたちが魚を求めて泳ぐ姿にみとれた。水中の様子がよく見える位置で、写真や動画を撮った。春ちゃんに送ってあげよう。きっと喜んでくれる。この水族館も懐かしいだろうし。


「かっこいいな」


いつのまにかシゲが隣に来て、画面と水槽を見比べながら話しかけてきた。


「速いし、きれい」


ペンギンの動きに見とれたまま答えた。


「エサ取ってんのがいいんだろうな。さっきも見たけど、今の方が動きがいい」

「だね」


あとは黙ったまま、終わるまでいくつか撮影した。




「尚人は?」とシゲがあたりを見回す。


「大きい水槽のところでスケッチしてた」

「今の見せればよかったな」


ああ、そうか。尚人くんにも描いてもらえばよかった。思いつかなかった。


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