ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
「いいじゃん、これ」
「平井さん、落とせるよ」
二人が顔を見合わせて嬉しそうに言う。
私の手を引っ張って立たせながら、「結衣はアイデアだけはいいからな、昔から」とシゲがからかってくる。からかわれていても、ちょっと嬉しい。自分ではうまく描けないけど、私。
頭の中に生まれたものが、それ以上の形になって目の前に現れるのは、想像以上に快感だった。描いたのは尚人くんだけど、三人で作った。そんな感じがした。
「なんか飲もう、暑くて死ぬ」
気軽に言って館内の自販機を探して歩いていくシゲの後ろ姿を見ながら、私は、湧き上がってきた気持ちをまだ持て余していた。尚人くんが後ろからぽんと頭を叩いて、追い越していく。
自販機前でスポーツドリンクを半分以上一気に飲んだシゲが、私を見た。懐かしい、この強気でやんちゃな笑顔。
「なんだよ?」
「水族館て久しぶりだけど、楽しいね」
もうちょっと気の利いたことを言いたかったけど、小学生みたいな感想になってしまった。楽しかった。すごく、久しぶりに。
「春ちゃんもいたらよかったな」
「そうだね。でもシゲがいれば十分かな」
何も考えずにうっかり口にしたらシゲが少し目を見開いた気がして、「尚人くんもいるからちょうど三人だしね」と急いで付け加えた。