ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
尚人くんは「涼しいところで熱いコーヒーが飲みたい」とペットボトルを嫌がり、水族館の隣にあるカフェに入ることになった。
スケッチブックをもう一度シゲが見ていて、「壁だけじゃもったいないかもなぁ」とつぶやいている。
「もったいないってどういうこと?」
「いくつか当てあるからさ、これ別でも使っていい?」
シゲの話はさっぱりわからないが、きっと仕事なんだろう。
「描くのは尚人くんでしょ? 私に聞くことないんじゃない?」
「いや、三人のクレジットでいいんじゃないの。元の案は俺じゃないし」
尚人くんはそう言ってくれた。クレジットかぁ、なんだかかっこいいな。
シゲはそのまま何か考え事をし始めた。こうなったらほっといたほうがいいんだよねこの人、と思って目をそらすと、尚人くんと目が合った。
たぶん、彼もわかっている。シゲは何か制作のアイデアを考え始めると時々心がどこかに行ってしまう。きっと変わってない。
二人で話してようかなと思って話題を振る。
「尚人くんも水族館久しぶりだった?」
「デートで行ったことあるかなぁ、高校の時。結衣は純くんと来たりしなかったの?」
「純は動物は描かないから、こういうところは来ないかな」
なんで純の話に振るのかなぁ、と思いながらも答えてみる。