ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?


純のことは、私からは誰にも言ったことがない。親には絶対隠したいみたいだから、地元でうっかりばれないように口は堅くしてる。


私が知ったのだって、ほんの偶然。


中三の春、いつものくだらない賭けに負けてシゲが忘れた体操着の袋を取りに行った。下校時刻ギリギリの教室で、それを抱きしめている純と遭遇しちゃったんだ。


その時の純のうろたえぶりを見てしまったら、本人相手にカミングアウトしてなんてとても言えない。


血の気が引くってああいうのを言うんだとわかった。そのまま足ががくがく震えて目を見開いて、この世の終わりって感じだった。


「絶対に言わないから、大丈夫。誰が誰を好きかなんて興味ない」


その時そう言って安心させたけど、かなり長いこと純がびくびくしていたことにも気づいていた。


最終的には、純が本当に安心したのはシゲがいなくなってからが初めてなんじゃないかと思う。皮肉なことだけど。






誰にもばらしちゃいけないけど、中でもシゲにだけは知られちゃいけないんだから。


あの時の純を思い出して、ちゃんとそう思う。


大丈夫。


ずっとそばにいてくれた純を、裏切ったりしない。


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