ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
原田さんは、大きなイラコンで賞を取ったんだって。イラコン?って聞き返したら、イラストコンテスト、と綾さんが教えてくれた。いつも出入りしてる人たちでお祝いするのかと思ったのに、お客さんも来るらしい。
パーティションやデスクを片付けて、ケータリングまで用意して立食パーティスタイルになった。元が工場だけに天井が高く、壁画もできていて、意外と様になる。
知り合いを連れてきた人が多かったらしく、結局だんだん増えて行って数十人集まって来た。 平井さんとシゲはあちこちであいさつしたり話し込んだりしている。
どう見てもシゲが最年少なんだけど、気負うことなく質問したり社内を案内したりしている。いろんな人に気に入られるってのがよくわかる。いきがるわけではなく、でも大人になろうと努力しているのを隠さない。率直で賢い好青年だ。
私は綾さんを手伝って、差し入れられたものを開けたり、飲み物の補充をしたりしていた。
「あ、この子です」
人の間を通り過ぎているところで突然、シゲが私の腕を掴んだ。シゲが誰かと話しているのはわかってたけど、私に気づいていると思ってなかったのに。
「絵の話。これ、重野結衣子です。この人は石川由美さん。額にしてくれる作家さん」
「サンプルできたから持ってきたの。これ、もらってくれる?」
「え、いいんですか? かわいい!」
渡された手作りのグレーの額は爽やかな感じにデコってあり、中のキャンバス地にプリントされたブルーグレーの絵を引き立てていた。
量産できるキーアイテムが欲しいと思っていたところに、私たちの絵がうまくはまったと聞いている。