ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?


絵が見たいと言われて、壁画と額縁の写真を両方見せた。


「これを結衣が考えたの?さすが美術部!」

「ざっくり考えただけで描いてないから」

「この鳥だけ白いのは?」

「最後にシゲが変えたみたい。きれいでしょ」


この鳥が私だって言われたことは言えなかった。意味がよく分からないし。


純は気に入ったみたいで、そこだけ拡大したりしてじっくり見ていた。シゲが色を決めたって言ったから?描いたのは尚人くんなんだけどね。





じっと見つめたまま、純がぽつりと言う。


「逃げられるのかもしれないね、まだ」


そう見える? 私には死にそうに見えるけど。




それから、純が予想外の報告をしてきた。恋人ができたという。


「え? いつの間に? 大学の人?」


好きな人の前にいきなり恋人って話だったから驚いた。ゲイだって誰にも言ってないんじゃなかった?


「こないだちょっとそういうクラブに行ってみて、そこで知り合った人なんだけど」

「純、会ったばかりの人? どんな人かわからない人といきなり付き合ったりしないほうがよくない?」


水を差すのは良くないかなと思いつつ、なんだか急な話でおかしい気がする。


「大丈夫だよ。男同士だから危ないことなんかもないしさ。だから結衣も気にしないで、僕のことは」


そう言い切られて、よかったねと言わざるを得なくても、なんだか腑に落ちない。


そんなにいいことあったらなんで最初に言わないの? シゲの話を聞いてたときのほうが楽しそうなのはなんでなの? 単に私に遠慮してる? それとも、無理してない?

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