ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?


ペンキ塗りを終えて作業場を出たら、平井さんに手招きされた。シゲもいる。仲がいいなぁ、この二人も。


「結衣ちゃん、石川さんの他の作品とか見た?」

「はい。いくつかネットで買いました」

「え? 買ったの?」


平井さんはおかしそうに笑った。「いいなぁ、俺そういう軽さは好きだなぁ」とか言うけど、軽いってことないでしょう。


せっかく額ももらったし、好きな感じの小物だから本当に欲しかっただけ。


シゲに「あの写真見せて」と言われて、スマホで表示して渡す。


私の部屋の壁の写真だ。結局写真立ては守がうるさそうなのでしまって、石川さんのだけじゃなくて手持ちの小物や百均アイテムなどで壁一面をアレンジしてみた。


我ながらかわいくできてると思って気に入ってる。


平井さんは「ふーん」と私のスマホをしばらく眺めた後、「お前が偉そうにするな」となぜかシゲの頭を叩いた。


スマホを返しながら、すれ違いざまに「電池切れそうだぞ」とシゲが屈みながらこそっと言う。


そんなどうでもいいこと言うのに、無駄に近づかないでよ。なにかと思うでしょ!


意識しちゃったのが表情に出たらしく、平井さんが面白そうに眉を上げてこっちを見ているのに気づいた。今度は顔が赤くなったのが自分でもわかって、逃げるように作業場に戻った。



それにしても最近よく電池切れする。買い替え時なのかな。




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