イビツな花火〜my story〜
「亜由菜。」


「えっ?」


「わたしの名前。亜由菜だよ」


「あぁ〜そうなんだ。
でっ?お前が花火やりたいって言ったの?」






名前…覚える気ないのね。
”お前”って…。




「うん。わたしが言った」


「なんでこの時期に花火なんだよ」




向こうで噴出花火や打ち上げ花火が次々と上がっていく。
”花火やりたい”って言った理由。
そんなのなくて、ただの思いつき。

まさか本当に実現するとは思わなかったけど…花火なんてしなくても
あの2人と、この公園に集まれたらそれだけで良かったんだ。




「う〜ん……花火ってさぁ、散るじゃん?わたしの恋も、今日の朝4時に散ったの。だからさっ…なんとなく。」




なんとなく今思いついた事を言ってみた。
上手いこと言うじゃんわたし!なんてちょっと思ったり。




「へぇ〜。」





ん?




ぇえーーーそれだけ?
それだけですか?自分から聞いておいて?!
失恋した話もしてるんだよ?
興味なしですか?





「あとね、この公園好きなの。
ブランコあるし星が綺麗に見えるし…
あの2人との集合場所はいつもここだし。嫌なことあったらいつも来るんだぁ〜





懲りずに自分の情報を話しまくっている…
あれ?わたしこんなに話すタイプじゃないのに…。
聞かれてもいないのに何ペラペラ
喋ってるのぉ〜。


本当、ペース乱されてる。



「へぇ〜」




また…あのたくさんの言葉に対して
たった2文字。



もうペラペラ喋るのやめよう…
なんて一気に俯き加減になった。




ずっと遠くを見ているりゅう君。
それは花火を見ているのか、空の方を見ているのか…わたしにはわからなかった。




なぜあなたはそんなに寂しそうな…
孤独そうな目を、表情をしているの?




「ねぇ…りゅう君。線香花火しよ?」





< 18 / 40 >

この作品をシェア

pagetop