イビツな花火〜my story〜
「線香花火?……別にいいけど」




遠くを見たまま
そう言って少し笑っていた。




「やったぁ!ならなら、これ持って♡
わたしのにも危なくないように火をつけて♡」






「お前さ……」



「えっ?なに?」



「いや…なんでもない」



「なにぃ?気になるから言って!」



「いや、別に」




「わかった!線香花火なんかで無駄にテンション上がって子どもだな。とか思ったんでしょ〜?」





「よくわかってんじゃん」


また少しだけ口端をあげて悪戯に笑う。



なにこの人。
ムッとするわたしの目の前にそっと差し出してくれたのは火花が咲き散る小さな線香花火。





パチパチと小さく咲いて散っていく。
静かで地味な花火が、傷ついたわたしの心を癒していく。


同時に、溢れてきた涙が静かに地面に落ちた。





「これ地味すぎじゃねぇ?
俺初めてやったかも…」






「えぇ?!」




驚きのあまりものすごく大きな声が出た

そして小さな火種がポタっと落ちた。








「はい、お前の負けね」



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