ふたりだけのアクアリウム
賞味期限は12月24日。
つまりタイムリミットも12月24日。
よくまあ、リミットをそんな日にしたものだと思ってしまうけど。
別に山口がそうしたわけじゃないんだろうし、偶然なんだろう。
例のお菓子を入手してから、するすると日々が過ぎていき。
あっという間に12月23日になってしまった。
当然のことながら祝日なので、事務員である私は休み。
となると会社で沖田さんと会うこともないし、いよいよ決戦(戦うわけじゃないけど)はクリスマスイブってことだ。
ここはひとつ、後輩の言っていたことを信じてミルキーピンクのものでも何か買いに行くべき?
沖田さんは、たぶん休日を返上して出勤している。
この時期の営業部は本当に忙しく、彼だけじゃなくて営業部に属してる人たちはみんな同じなのだ。
クリスマスは基本的に子供向けのお菓子が売れる。
例えば学校や子供会や習い事の場で「クリスマス会」などが行われるので、その時に子供たちに配るためのお菓子を大人が大量購入するパターンが多いのだ。
そうなると小売店での売上が伸びるため、自ずと発注が増えてこちらの出荷も増える。
基本的な調整は担当営業がするので、携帯電話や会社の外線は鳴りっぱなしという場合がほとんどだ。
きっと今頃、沖田さんは一生懸命仕事をしている。
そう考えたら、ミルキーピンクのアイテムを買いに行くどころか頭の中までミルキーピンクになっている私の相手なんて、している暇など無いはずだ。
いつか、そのうち、今度。
繰り返しているうちにリミットが目前。
不器用ながらもそれらしくラッピングした、あのビターチョコは自信なさげにテーブルの上にちょこんと乗っていた。