ふたりだけのアクアリウム
ご飯を食べ終わって、食器を片付けた頃には時刻は間もなく12時を回ろうとしていた。
「沖田さん、明日も出勤ですか?」
「うん、するつもり」
「本当に大変ですね……」
「ま、12月はしょうがない」
今月に入って休んだ日は、もしかしたら彼は無いかもしれない。
営業部の年末ってこんなにも大変だなんて、ここまでとは知らなかった。きっと、今までは気にも留めてなかったんだ。
「営業成績、いつも見てます。トップ独走中ですね。係長の必死な顔が新鮮です」
「あはは、たまたま今月は調子いいだけだよ」
沖田さんは謙遜してるけど、綱本係長に「これからは遠慮しない」って宣言していたから、これは本来の実力なのかも?
食後のコーヒーを飲みつつ、甘いものが欲しいなぁと思っていた時。
ベッドの下に押しやった紙袋が視界に入り、即座にそれを引っ張り出した。
「あっ!もう12時になっちゃう!」
私は半ば強制的に沖田さんにラッピングした袋を押し付けた。
「これ、一緒に食べませんか!?賞味期限ギリギリなんです!」
「え!?な、なに!?」
食べ物が入ってるの?と沖田さんは首をかしげて袋を開ける。
そして、中身を見てふにゃりとした笑顔に変わった。
「えー!これってもしかして」
「試作品の……余りです、すみません」
「どうして謝るの?このお菓子すっごい美味しかったからまた食べたいって思ってたの」
「製造部の同期に分けてもらって、簡単にラッピングしただけの手抜きプレゼントなんです」
「そんなの気にしない」
中からいくつかお菓子を出して、ふたりで分ける。
お楽しみ袋をワクワクしながら開ける小学生みたいで、無条件に頬が緩んだ。