ふたりだけのアクアリウム


「僕は君が好き。今日は、本当なら僕から会いたいって連絡するつもりだった」


沖田さんの思わぬ告白。
いや、本当はちょっと期待してた。
私から言い出すか、彼から言い出すか、どっちが早いだろうって。

大人なんだから、空気感は分かってるつもりだった。


「クリスマスイブに特別な思い入れは無いんだけど、女の子はきっと好きだと思って。連絡するの我慢してました」


沖田さんがゴソゴソと鞄から出したのは、意外なもの。

ミルキーピンクのバラの花、1本。

可愛くて、ロマンチック。


「僕と、付き合ってくれませんか?」


おまじない、効いた。
私のバッグにつけた小さなミルキーピンクのミンクボールよりも、ずっと効果の強いものが目の前に。

バラってこんなに綺麗だったっけ。


「私も大好きです。私でよければ、付き合ってください」


言い切った直後に抱きすくめられた。
ふわっと香ったのは、私と同じビターチョコ。ほんのりコーヒー。


「ほんとはね、ずっとこうしたかった」


耳元で聞こえるのは、電話越しじゃない彼の声。
直接体に響くみたいで、なんだかくすぐったい。
体の芯まで温まるみたいな、温熱効果抜群の優しい声だ。


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