ふたりだけのアクアリウム
彼女は少し前にもこうやって「いつも大変ですね」なんて言いながら、コーヒーをくれたんだった。
周りをよく見てるなぁと感心した。
僕みたいな、目立たなくて地味な男でも気にかけてくれるのは嬉しかったし、その気配りに心が軽くなるのを感じた。
彼女を見ていて分かったのは、誰にでもそうだということだった。
僕だけじゃなくて、他のみんなにも。
男性女性上司先輩後輩、みんなに対して同じ態度で接する。
適度に距離を置いて、節度のある対応をしていた。
見た目は取り立てて美人とかじゃないけれど、可愛らしくて女性らしい。
決して媚びることもなく、自然体なひとだった。
それが、ある日。
彼女の顔が最近とても曇っていることに気がついたんだ。