ふたりだけのアクアリウム
少し前まではひんやりとしていた僕のマンションのリビング。
それが彼女と暮らすようになったら不思議と温もりを帯びるようになった。
「ただいま」
「おかえりなさい」
そんな何気ないやり取りにとても癒されているのなんて、彼女は知らないんだろうな。
2月は一番冷え込む時期で、厚手のコートを着てマフラーを巻いていてもまだ寒い。
早く暖かい場所へ帰りたくて、マンションへと急いだ。
去年の暮れから、僕の会社での営業マンとしての立ち位置が少しずつ変わってきた。
係長からの嫌がらせが無くなって本来の仕事をこなすようになったら、自ずと営業成績が伸び出して、あっという間に成績トップになってしまった。
これはさすがに僕も予想外だった。
しかも、運がいい事にそれが2月になった今も続いている。
「いったい何があったんだ?」と部長に聞かれたりもしたけど、曖昧に笑ってごまかすしか出来なかった。
まさか係長のことは言えないし。
あのことを知ってるのは、僕と彼女だけ。