ふたりだけのアクアリウム
━━━━━もしかして、また地雷踏んだ?
「すみません、出すぎたことを……。ちょっと思っただけなんです」
咄嗟に謝ると、沖田さんは慌てて首を振って「凄いね」と笑ってくれた。
「僕、けっこうポーカーフェイスな方だと自負してたんだけど。佐伯さんには見破られちゃった」
「あ……じゃあ契約取れなかったんですね……」
「ん?」
彼がやや怪訝そうな表情になったことで、私はまたしても地雷を踏んだと猛反省した。
いや、今度のは地雷じゃ済まされないかも。
「ご、ごめんなさいっ!つい!沖田さんお人好しっぽいから、契約逃しちゃったのかと思い込んじゃって……」
「あはは!あー、そっか!そういうことかぁ」
何故なのかは分からないが、沖田さんはとても楽しそうに口を開けて笑った。
こんな話題なのに、どうしてそんなに笑うのか謎だった。怒ってもいいところだっていうのに。
ポカンとしている私に、彼はさっきとは打って変わったようなあっけらかんとした笑顔を浮かべ、そして軽く首をすくめた。
「契約は1件取れたよ。他にも取引先から新商品を何件も発注もらえたし。でも佐伯さんが僕に何かあったって思ったんだったら、それはある意味正解」
「正解って……何があったんですか?」
「大人の事情だから。気にしないで」
答えは濁され、それこそ沖田さんの人の良さそうな微笑みで打ち消されてしまった。
大人の事情ってなんなのよ。気になるし。
逆にモヤモヤしてしまった私を差し置いて、沖田さんは非常にスッキリした様子だった。
「さっきからずっと暗い気持ちだったんだけど、マシになった。佐伯さんのおかげ」
「何があったのか気になるんですけど」
「それはおいおいね」
口は固いってわけだ。