ふたりだけのアクアリウム
「ねぇ、山口ってなんか趣味ある?」
「は?なに急に」
食べたいと言った手前、引くに引けないのでハンバーグ&ナポリタンセットを頼んだ私が、何気なく向かいに座る山口に尋ねてみた。
彼はご飯粒を口の周りにあちこちくっつけながら、もぐもぐと咀嚼している口で答える。
「まー趣味って言ったらバイク乗るくらいかなー」
「ふーん」
「おい、聞いておいてなんだよ。興味なさそうな返事」
意外性のない趣味だったので、無意識に適当な返事をしてしまっていたらしい。
不満げに私を見ている山口に、愛想笑いを返しておいた。
「佐伯は趣味とか無いわけ?」
「う〜ん、……今のところ」
水草水槽を趣味にしたらいいかなぁと思ったけど、右も左も分からない私としては始め方すら分からないわけで。
ペットらしいペットも飼った経験が無いし、生き物を飼うってどんなだろうという興味もあった。
頬杖をつきつつ、フォークを回転させてナポリタンを絡める。
ちょうどいい量になったところで口に運んでいたら、山口がいいことを思いついたとばかりにわざとらしく手を叩いてきた。
「あ!じゃあさ、これはどう?」
「なぁに?」
「佐伯もバイクに乗ってみない?なんていうか……その、俺の後ろに」
「いい。お断りします」
「えー!うなずくところだろ、そこは!」
軽くショックを受けているらしい彼を横目に、「だって乗りたいと思えないんだもん」と口を尖らせた。
「転んだりしたら大怪我しちゃうし、エンジンの音とか大きくてちょっと怖いし、乗るなら宇崎竜童みたいな人の後ろがいいな」
「宇崎竜童ってそれは無理だわ」
話していて、お互いにプッと吹き出す。
なんてくだらない話。