ふたりだけのアクアリウム


会社帰りに、ついに寄ってしまった。
ペットショップがアーケード街に面した分かりやすい場所にあるので、なんとなく足を運んでしまったのだ。


入口から見えるところには、人気の生後間もない犬猫が可愛らしい表情を見せながらゴロゴロ寝転んでいる。
ポン太が死んでから犬は飼わないと決めているので、そこは完全に素通り。

奥にハムスターや魚、それから爬虫類などが売っているのは知っていたので、おそるおそる歩を進めた。


数多くの金魚コーナーのそばに、熱帯魚もチラホラいるのを見つけて駆け寄る。
水草も……けっこうな種類売っている。

ひとつひとつ見るとそんなに高くないけれど、色々組み合わせると高価になるんだろうか。


「何かお探しですか?」


大きな水槽でスイスイ泳ぐ小さくて色鮮やかな熱帯魚を目で追っていたら、笑顔の爽やかな若い男性店員が話しかけてきた。


「あ……、あの、知り合いが水草水槽を部屋に置いていて、いいなぁと思ったんですけど、右も左も分からないまま始めるのって大変ですか?」

「水草水槽?あぁ、今一部で流行ってますよね」


その店員はすぐに私の要望を察して、ニッコリ微笑んだ。


「どこまで本格的に始めるかにもよりますけど、水草水槽ってけっこう手間かかるんですよ。水草を植え付けて根付かせたり、流木にコケをくっつけて馴染むまで何ヶ月も待ったり」

「やっぱり大変なんだ……」

「水槽の手入れも面倒なんです。小さめの水槽で普通に熱帯魚と一緒に飼ったりするのはどうですか?水草も砂利も少し入れて、見栄えもいいですし」


やっぱり熱帯魚をすすめられた。
その方が楽ならば、いっそ熱帯魚を飼ってみようかな。
今少し見た限りでは、色もカラフルで小さいし、見ていて飽きない。

思い切って始める?


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