ふたりだけのアクアリウム
「沖田さんちで見た水草水槽が素敵だったから、私も始めてみようかなぁって。熱帯魚を少し入れて、小さな水槽を置きたくて。何も分からないから、教えてもらえませんか?」
すると、沖田さんは見たこともないような嬉しそうな顔をした。
とろけそうなくらい、優しい顔で笑ったのだ。
「もちろん教える。……すごく嬉しい。興味持ってもらえて」
「ハマっちゃいました」
「僕でよければ、知ってる事はなんでも教えるよ」
そんなに嬉しそうな顔しなくても。
こっちまで照れそうになってしまった。
「次の日曜日、もし佐伯さんが空いてるなら一緒に見に行こうか?」
もうこうなったら断るはずがないわけで。
頭で考えるよりも先に、その沖田さんの誘いを即座に承諾してしまっていた。
「はい!お願いします」
「こちらこそ」
あれ?
そういえば沖田さんはいつも車で通勤していたはずなんだけど。
今日は違うのかな?
「今日は車じゃないんですか?」
素朴な疑問を口にしたら、彼は苦笑いした。
実はね、と前置きをして。
「近くに住んでる弟が事故っちゃって車を修理に出してるらしくて。それでどうしても今日だけ貸してくれって言われたんだ」
「沖田さんらしいですね。お人好しっていうか」
「そうかな」