ふたりだけのアクアリウム
「えっ?なにその反応。もしかしてとっくに告白されてるパターン?」
咳き込む私に、ぐいぐい切り込んでくる茅子さん。
こうなるともう止めようがない。
どこかの有名な占い師かっていうくらい当ててくるのだから。
「ちょっとちょっと、聞いてないじゃないの!詳しく教えなさいっ」
「詳しくも何も、そんな面白いものでもないですよ……」
「まず確認。山口くんに好きだと言われたのかどうか」
来た、尋問開始。
茅子さんは食べかけのホットサンドには目もくれず、私の目を鋭い目つきで見つめている。
「えーと……少し前に」
「いつの間に〜!気づかなかったわ。……で?返事は?」
「………………お断りしました」
「あら。なんで?」
オブラートってものを知らない彼女は、なんでも直球で聞いてくる。
「なんで?」という質問に答えるのに時間がかかっていると、茅子さんはさっさと答えを予想してしまった。
「なぁんだ。いっちゃん、いい人いるのね?」
いい人。
それは、一言で表すにはちょうどいいのかもしれない。
だって沖田さんはまさにいい人。お人好し。損をしてしまうほどに。
細かいことなんてどうでもよくなるくらい、おおらかで優しい笑顔を見せてくれる彼は、会社だけでの印象で言ったらあまり良くないかもしれない。
でも、私は知ってる。
会社の人たちはたぶん知らない部分を。
「好きな人がいます」
ハッキリとそう答えた。