しずく
終点の駅につくと、溢れる水のように人が出て行く。

あたしはその勢いに流され、改札までの道を歩いていると、誰かに勢いよく肩をつかまれた。
ビックリして振り向くと、普通のサラリーマンのおじさんが真っ赤な顔をしてあたしの肩をつかんでいた。



「……あのー…」



あたしの声は届いていない様子だった。最悪、また遅刻指導に怒られるよ…。そんなどうでも良い事だけを、あたしは考えていた。


サラリーマンは真っ赤な顔のまま口をパクパクさせて言った

「し…しししずく…!」


「……あたしは雫じゃないです、美里です」


と、はっきりと言い切ってサラリーマン手を肩からどけた。
するとサラリーマンはすぐに真っ赤になった顔が元に戻って次は青くなった。


「すいません…知り合いに似てたもので…」


肩をがっくりと落として、改札へと歩くサラリーマンに声を後ろからかけた



「雫って、瀬野雫ですか?」



するとサラリーマンは肩をビクッと震わせこっちをみた。






「瀬野雫はあたしの姉です。」


「………僕は田中雅樹、雫とお付き合いさせてもらってます。」



この、田中さんとの出会いがあたしの人生をこんなに楽しく、苦しくするなんて思わなかった。
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