しずく
あたし達は学校を、会社を休んで喫茶店にいる。
なんでか解らないけどこの人と話さないといけないって思った。
田中さんはあたしにメニューを広げてみせるとあたしにメニューを決めるように促した。
あたしはクリームソーダを指さしたら田中さんはすぐに店員さんに「クリームソーダとアイス」と伝えた。
急になんでクリームソーダを頼んでしまったんだろうって後悔した。田中さんは大人なんだなあ…となぜかとても実感した。

「雫の命日に美里ちゃんと会えるなんて運命だと思っちゃったよ」
田中さんはおしぼりで丁寧に手をふきながら言った。
田中さんはきっと年齢よりも若くみえるタイプなんだと思う。おじさんを感じさせる要素はひとつもなかった。
「そうですよね、10年前の今日ですもんね」
「美里ちゃんは今何歳なの?」「高校三年生の17歳です」
あたしがそう言うと田中さんは笑顔が少し消えた
「じゃあこれからは雫よりも年上になるんだね」
そんな表情を隠すように田中さんは俯きながらこう言った。

気まずい空気がふたりの間に流れる、田中さんは彼女の事すごい好きなんだなあ…って思った。
< 4 / 15 >

この作品をシェア

pagetop